
2017年7月7日、JR札幌駅で社員の飲用や一部の飲食店で使用していた地下水から、有害物質であるテトラクロロエチレンが基準値を超えて検出されていたとして話題になっています。
テトラクロロエチレンとは聞き慣れない名前ですが、いったとどんな有害物質なのでしょうか?
この記事では、有害物質テトラクロロエチレンとはどんな毒物なのかをわかりやすく解説します。
また、テトラクロロエチレンの環境基準値や健康被害についても調べてみました。
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テトラクロロエチレンとは?
テトラクロロエチレン (tetrachloroethylene) は1821年に物理学者としても有名なイギリスの化学者マイケル・ファラデーによって初めて合成された物質です。
分子記号は、C2Cl4で、塩素(Cl)4個と炭素(C)2個から構成された比較的単純な分子構造をしています。
物質の性質としては、室温で不燃性の液体として存在していて、空気中に蒸発していきやすい性質を持ちます。
また、鋭く甘い悪臭を持っていて、たいていの人は1ppm(0.0001%)存在するだけでその匂いに気がつきます。
使用用途の大部分が溶媒としての利用です。
ほとんどの有機化合物はテトラクロロエチレンに溶けるのでドライクリーニングにも使われます。
また、自動車の部品などの金属製工業製品から油を洗い落とす用途にも使われています。
なにか名前だけ聞くとものすごく凶悪な毒物の印象を受けますが、ドライクリニーングにも使われているということで、私たちの生活に身近な物質なのですね。
テトラクロロエチレンの健康被害
テトラクロロエチレンは、体内に取り込まれると中枢神経を麻痺させる作用があります。
密閉された換気の悪い場所で蒸気を吸い込むと以下のような症状におちいり、死亡することもあります。
- めまい
- 頭痛
- 眠気
- 錯乱
- 吐き気
- 言語障害
- 歩行困難
- 意識不明
また、高濃度のテトラクロロエチレンを繰り返し、あるいは広範囲にわたって肌に触れさせると、脂肪が洗い流されてしまい、皮膚が激しい炎症を起こす場合があります。
テトラクロロエチレンへの被曝量がより多くなるドライクリーニング店で働く女性は、生理不順や流産の割合がそうでない女性に比べて多いことを示唆する研究結果もあるようですが、他の可能性が考慮されていないため、これらの問題がテトラクロロエチレンによるものかは明らかにはなっていません。
明らかになっていないとしても疑わしくはあるということで、女性を働いているドライクリニーング店や工場では十分にテトラクロロエチレンの濃度が低くなるよな環境基準や作業要領などを定めておく必要がありそうですね。
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テトラクロロエチレンの環境基準値や環境への影響
環境基本法第16条第1項の規定に定められているテトラクロロエチレンの基準値は1年平均値が0.2mg/m3以下であること。
つまり、1m立方の土壌の中にわずか0.2mgしか存在してはいけないということです。
かなりの微量ですね。
土壌汚染の原因物質として報道されることがよくありますが、これは、ドライクリーニング店などの使用している工場の数が多いにもかかわらず、最近まで廃棄の規制がなかったため、地下へ浸透させてしまったことが直接的な原因となっています。
また、
- 粘性が低いため土粒子間にとどまりにくい
- 土壌との反応があまりなく吸着しにくい
- 比重が水よりも重いため深部へと拡散しやすい
- 原液が少量でも水質基準が低いため膨大な汚染となる
- 地盤中に染み込んでいて臭気・色など汚染を体感しにくい
などの特性のため、地下水へ汚染が移動し広域に汚染を拡散させてしまうことも原因としてあげられています。
まとめ
有害物質として時折その検出が報道されるテトラクロロエチレンについて、その性質や健康被害と環境基準などについて調べてみました。
溶剤として広く使用されており、私たちに暮らしを便利にしてくれている物質ですが、微量でも健康被害があることも明らかであり、その管理に十分注意を払う必要があります。
2017年7日7日にJR札幌駅でテトラクロロエチレンが検出された例では、7月10日まで汚染水の使用が制限されておらず、そば屋の水として使用されていたとの報道もあり、ちょっとぞっとするものがありますね。
法整備が遅れていたという話からも業者の危機意識が若干低いのかなという印象もあります。
健康被害を最小限に抑えるという意識を持って管理を徹底してもらいたいものです。
<参考サイト>
Wikipedia-テトラクロロエチレン
最後までお読みいただきありがとうございました。
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