
インフルエンザの重大な合併症として、インフルエンザ脳症があります。
しかし、「名前は聞いたことはあるが、どんな病気かよく分からない」「子供の病気だから関係ない」というからが多いのではないでしょうか?
発症すると、死亡や重大な後遺症につながりかねない「インフルエンザ脳症」について、症状や後遺症について調べて見ました。
また、大人の発症例についても触れていきます。
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Contents
インフルエンザ脳症とは?
インフルエンザにかかった幼児(主に1~5才)に、けいれん、意識障害、異常行動などの症状がみられる病気で、多くの臓器が働かなくなって命に関わることもあります。
インフルエンザ脳症はインフルエンザにかかったその日から1~2日くらいで発症します。そして、患者の8割は発熱してから数時間から1日以内に神経症状が見られます。
重症化に至るまでが速く、朝に発熱したら夜は人工呼吸器を装着していたというようなこともあります。そして怖いのは、特に有効な治療法もなく対症療法のみということです。
かつては年間100~200人くらいみられていましたが、最近は少なくなっています。しかし、インフルエンザの患者が、インフルエンザ脳症になるかを予測する手段はないのが困ったところです。
インフルエンザ脳症は、日本人に多い症例で、A香港型でよくみられます。インフルエンザ脳症の発生に人種的な差があるかもしれませんがよくわかっていません。
インフルエンザ脳症は大人でも発症するの?
インフルエンザ脳症の患者の殆どは主に1~5才の幼児ですが、まれに大人でも発症し、死亡例もあります。
<大人の発症の報告例>
→ <速報>インフルエンザ脳症による成人の死亡例
大人の症状も子どもとおなじくけいれんや意識障害が起きます。
解熱鎮痛剤の服用や、糖尿病や心不全の持病がある人は発症の危険性が上がりますので注意しましょう!
追記
2017年2月8日にアイドルグループ・私立恵比寿中学(エビ中)のメンバーの松野莉奈(まつの・りな)さんが18歳で急逝されました。死因はウイルス性急性脳症と発表されましたね。
2月9日現在ではっきりした死因は公表されていません。
一説にはインフルエンザ脳症ではないかと言われています。
大人に発症することは稀と言われているインフルエンザ脳症ですが、やはり発症することがあるのですね。
発症したのが有名アイドルということもあり、今後は薬の使用が適切だったのか等、注目を集めそうですね。
東京都内の自宅で療養していたが容体が急変し、この日午前5時ごろ、両親が119番通報し病院に救急搬送されたが、病院で死亡が確認されたという。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170208-00000314-oric-ent
松野莉奈さんの急変の様子からすると、発症から数時間で重体となるインフルエンザ脳症の症状と似ています。
インフルエンザ脳症の症状
けいれん
60~80%に見られます。
全身がガタガタ震えるような硬直性が多く、持続時間は色々ですが短い場合は1分足らずです。熱性けいれんとインフルエンザ脳症によるけいれんの判断はすぐにはできません。
まず、医療機関に連絡をして下さい。
意識障害
「呼んでも返事をしない。少しくらいの痛みには反応しない」状態。
「寝ぼけ」と区別する必要がありますので、怪しい時は医療機関に連絡をして下さい。
異常行動
インフルエンザ脳症のまえぶれとして異常行動があります。
・両親がわからない。いない人がいるという。
・自分の手を噛むなど、食べ物とそうでないものの区別ができない
・アニメのキャラクターや象などが見えるなどの幻視・幻覚
・意味不明な言葉を発する。ろれつがまわらない。
・おびえ、恐怖、恐怖感の訴え・表情
・急に怒り出す、泣き出す、大声で歌い出す
異常行動は「熱性せんもう」との区別が難しいので、「おかしい」と感じたら医療機関に連絡して下さい。
インフルエンザ脳症の致死率と後遺症は?
インフルエンザ脳症で死亡する子供の数は10%以下です。しかし、後遺症は約20%と比較的高い確率で出ると言われています。
後遺症として、運動麻痺や嚥下障害、視覚・聴覚の障害などの身体障害、精神遅滞や知能低下、てんかんなどの精神障害などが見られます。
後遺症はリハビリによってある程度回復することはありますが、完全な回復は難しいようです。
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インフルエンザ脳症の原因
インフルエンザ脳症の原因はまだはっきりとは解明されていませんが、原因として次のような4段階で進行するという仮説があります。
- ウイルスの感染と鼻粘膜での増殖 (この段階の症状は、熱、鼻汁、咳などの風邪症状)
インフルエンザウイルスは鼻粘膜で増殖して全身に広がります。
インフルエンザ脳症では脳内からウイルスが検出されたことは殆どなく、ウイルスが直接脳内に侵入しなくても発症します。 - 免疫系の障害による高サイトカイン脳症(けいれん、意識障害、異常行動)
インフルエンザのきわめて強い毒性で免疫系が強烈なダメージを受ける。
↓
過剰な免疫反応が起きて、血液中で”サイトカイン”(体内に侵入した病原体を排除する物質)が増え「高サイトカイン血症」になる。
↓
「高サイトカイン脳症」になった脳内では免疫が正常に機能しなくなり、脳の中で鼻粘膜に一番近い側頭葉(感覚・感情を調整する役割)が障害を受ける。 - 多くの細胞が障害を受け、全身状態が悪化
- 血管が詰まったり、多くの臓器の障害 (血管炎~多臓器不全)
インフルエンザ脳症への解熱剤の影響は?
解熱鎮痛剤であるボルタレン(ジクロフェナク)、ポンタール(メフェム)はインフルエンザ脳症の発症が増えることがわかっており、インフルエンザ患者への使用が禁止されています。
また、市販の風邪薬に含まれているアスピリンも使用は控えられていますので、インフルエンザが疑われるときは、自己判断で安易に解熱剤を使用しないよう注意しましょう!
インフルエンザ脳症の予防はできる?
ワクチンを接種すればインフルエンザ脳症にかからないといわれたこともありましたが、ワクチン接種していてもかかる場合はあります。
ただし、ワクチンによる免疫のでき方は個人差が大きいですし、2才くらいまでは免疫も十分ではないこともありますので、ワクチンが効かないとは決めつけられません。
ワクチンを毎年接種を続ければ、だんだん免疫も高まりやすくなります。ですので、乳児期からでも積極的に接種した方がよいと思われます。
発症が多い1~5才頃に十分な効果を得るために、生後6ヶ月から積極的に接種した方が良いです。
抗インフルエンザ薬はインフルエンザ脳症に効くの?
インフルエンザ脳症を抗インフルエンザ薬で抑制できるかどうかはよくわかっていません。
ウイルスの量が最大になる症状が出てから48時間以内にに抗インフルエンザ薬を使って増殖を抑えれば、症状の悪化やインフルエンザ脳症などの合併症を防ぐことができる可能性はあると思われます。
しかし、インフルエンザ脳症の進行はきわめて早いため、けいれん、意識障害、異常行動などが見られるようになってからでは、あまり効果が期待できません。
インフルエンザ脳症が疑われるときは?
急な発熱など、インフルエンザが疑われるときは、近隣病院、クリニックの内科や小児科を受診しましょう。耳鼻咽喉科でも診察してくれます。
インフルエンザの検査や受診についてはこちらから。
→インフルエンザ検査方法と時間や料金を調査!受診時期はいつがベスト?
また、インフルエンザ脳症が疑われる時に受診すべきなのは、神経内科あるいは脳神経外科です。もちろん、インフルエンザで受診した内科、小児科、耳鼻咽喉科の先生に相談しても構いません。
ただし、けいれん、意識障害、異常行動などのインフルエンザ脳症が疑われる症状が見られたときは、迷わず救急車を呼びましょう!
上で触れたように、インフルエンザ脳症は重症化が速く、一刻も早く医療機関で処置を受ける必要があります!
まとめ
- インフルエンザ脳症はインフルエンザにかかった1〜5歳の幼児に多い病気で命に関わることもある。
- まれに大人がかかることもあり、死亡例もある。
- 主な症状は、けいれん、意識障害、異常行動
- 後遺症が発生する確率は約20%
- インフルエンザ脳症の確率を高めるので解熱剤の使用は禁止されている。
- ワクチンを接種していたもインフルエンザ脳症になることはある。
- ワクチンで免疫はだんだん高まるので、生後6ヶ月からは積極的に予防接種を受けた方が良い。
- インフルエンザ脳症が疑われるときは救急車を呼びましょう!
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<参考サイト>
吉田クリニック http://www.yoshida-cl.com
http://大人インフルエンザ.com/entry6.html
こそだてハック https://192abc.com/41980