
冬になると鳥たちの間でもインフルエンザが大流行します。
特に2016年冬季は、日本でも2年ぶりに各地で鳥インフルエンザが多発しており、連日ニュースや新聞で騒がれていますね。
ところで、なぜ鳥の病気なのに、専門家やメディアはそれほど騒いでいるのでしょうか?
気になる鳥インフルエンザとはどんな病気なのか?感染経路や検査方法と症状などについて調べてみました。
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Contents
鳥インフルエンザとは何か?
本来、インフルエンザウイルスはカモやアヒルなどの水鳥 を中心とした多くの鳥類が腸管に保有している弱毒性のウイルスです。
そのウイルスが突然変異によりヒトの呼吸器への感染能力を持ったものが、人間に大流行している季節性インフルエンザです。
一方、鳥インフルエンザの原因となるA型インフルエンザウイルスを一般的に、鳥インフルエンザウイルスと呼んでいます。
そして、鳥の間で感染するインフルエンザウイルスがヒトや他の動物へ感染した場合も鳥インフルエンザという名前で呼んでいます。
鳥インフルエンザウイルスは、ヒトへの感染性を持っていません。しかし遺伝子の突然変異・交雑によりヒトへの 感染性を獲得することがあります。
なかでも高病原性鳥インフルエンザウイルス が問題となります。
高病原性鳥インフルエンザとは何か?
通常、カモやアヒルなどの水鳥の腸管にインフルエンザウイルスが存在して共存をはかっており、水鳥自体を病気にすることはほとんどありません。
水鳥から豚などの他の家畜に感染してはじめて病気を起こす性質(病原性)を示すことがあります。
病原性を示しても、大部分は病原性は低く(低病原性)、家畜を死なせるまでのことはありません。
一方、当初より毒性が強かったか、 遺伝子に変異が起こり、感染した家畜を殺すほど毒性が強くなったウイルス株が、高病原性鳥インフルエンザウ イルスです。
国際獣疫事務局(OIE)の定義では、「最低 8 羽の 4~8 週齢の鶏に感染 させて、10 日以内に 75%以上の致死率を示した場合」に「高病原性」を考慮するとしています。
鳥インフルエンザの型
ヒトへの感染が確認されている鳥インフルエンザは、以下があります。
高病原性;H5N1、H5N6、H7N9
低病原性:H9N2
2016年冬季に日本各地の鳥類の間で流行しているのはH5N6亜型です。
WHO(世界保健機構)がまとめた2016年6月13日付報告(厚生労働省検疫所より)を元にウイルスの型と感染者数と死亡者数をまとめたのが下の表です。
ウイルスの型 | 感染者数 | 死亡者数 | 報告日付 | 備考 |
H5N1 | 851 | 450 | 2016年6月13日 | 2003年以降16カ国の統計 |
H5N6 | 14 | 6 | 2016年6月13日 | 2014年以降の統計 |
H7N9 | 800 | (不明) | 2016年11月11日 | 2013年以降の統計 |
鳥インフルエンザと新型インフルエンザの関係は?
鳥インフルエンザ=新型インフルエンザではありません。
鳥インフルエンザは、上でも書いたように鳥同士での感染症のことを指します。
その鳥インフルエンザの原因ウイルスが、遺伝子の変異によって、ヒトからヒトへと効率よく感染する能力を獲得したものを新型インフルエンザと呼びます。
鳥インフルエンザウイルスが新型インフルエンザウイルスになる仕組みは、2つあります(下図)
- ヒトや豚に、ヒトのインフルエンザウイルスと鳥インフルエンザウイルスが同時に感染し、それぞれが混ざり合って、ヒトからヒトへ感染する新型インフルエンザウイルスになる
- 鳥インフルエンザウイルスがヒトや鳥類の体内で変異し、ヒトからヒトへ感染する新型インフルエンザウイルスになる
引用:厚生労働省 鳥インフルエンザに関するQ&A
鳥インフルエンザはどうして怖いのか?
ほとんどのヒトは新型インフルエンザに対処する免疫を持っていません。
そのため、ヒトとヒトの間で急速かつ大規模な流行を引き起こし多数の死者を出す恐れがあります。
高病原性鳥インフルエンザが新型インフルエンザに変異して、大流行と多数の死者を出す恐れがあるため、専門家は高病原性鳥インフルエンザの流行をこれほど警戒しているのです。
鳥インフルエンザ の人への感染経路
鳥インフルエンザウイルスは、通常、人間に感染しません。
しかし、養鶏場への立ち入りや病鳥の調理などの濃厚接触により、その体液や排泄物を吸飲したり、生肉を摂食することで稀に感染が起こります。
ただし、鳥インフルエンザウイルスがヒトに直接感染する能力は低く、ま た感染してもヒトからヒトへの伝染は非常に起こりにくいと考えら れています。
近年、インドネシア、ベトナム、タイやエジプトを中心に、H5N1亜型の高病原性鳥インフルエンザウイルスがヒトに感染し、鳥インフルエンザ(H5N1)を発症した事例が報告されています。
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鳥インフルエンザの感染予防策
食事
一般の人が気になるのは鶏肉や鶏卵を食べても大丈夫か?という点ですよね。
現在のところ、鶏肉や鶏卵を食べて鳥インフルエンザウイルスがヒトに感染したという報告はありません。
なお、WHO(世界保健機関)は、東南アジアなどの高病原性鳥インフルエンザが集団発生している地域では、食中毒予防の観点からも十分な加熱調理(全ての部分が70℃に達すること)が必要であるとしています。
ですから、鳥インフルエンザの流行期には鶏肉は十分加熱されたものを食べた方が安全ですね。
鳥との接触
お仕事などで病鳥に濃厚に接触する可能性の高い場合は、医療用マスク、ゴーグル、防護服などを着用し感染防御を徹底することが大事です。
また、抗インフルエンザ薬の事前服用が推奨されています。
動物園などでは鳥類の観覧を中止しているところもあります。
鳥インフルエンザの流行期は、お住いの近くに養鶏場などがあっても、特に用事がなければ立ち入らないに越したことはありません。
国の防疫対策
養鶏場などで鳥インフルエンザが発生した場合の対処については、家畜伝染病予防法によって定められていています。
農林水産庁の指導により、病気の鳥が発生した時の国への報告と、必要に応じて殺処分することになっています。
鳥インフルエンザウイルスのワクチン
現在鳥からヒトへの感染が最も恐れらている高病原性ウイルスH5N1型の感染予防として、H5N1不活化ワクチンが開発されています。
2007年には国から製造販売承認が出され、H5N1ワクチン3千万人分が製造され、備蓄されています。
備蓄ワクチン量が限られているので、H5N1が流行した場合は、医療従事者、社会機能維持者の順でワクチン接種する優先順位が決まっています。
鳥インフルエンザの症状
鳥インフルエンザの潜伏期は3~7日と考えられています。
感染性の可能性がある時期は発症前日から発症後7日間程度です。
症状は通常のインフルエンザとよく似ており、発熱、呼吸器症状、全身倦怠感などの症状が出ます。
さらに、高病原性鳥インフルエンザでは、急速な呼吸不全や全身症状の悪化、多臓器不全の合併症を起こして死に至ることが報告されています。
鳥インフルエンザの検査方法
以下の条件をすべて満たす人は鳥インフルエンザウイルス感染が疑われます。
- 鳥インフルエンザが流行している地域へ渡航または在住し、帰国後10日以内
- その地域で鳥(体液や排泄物も含む)または鳥インフルエンザ感染の患者と接触した
- 咳・痰・呼吸困難などの呼吸器症状、および発熱を有する
ただし、1と3を満たすが、2を満たさない患者でも、特に持病がなくて急激に症状が悪化する場合は、鳥インフルエンザウイルスの感染を疑います。
もし、以上の条件を満たしている場合は、近隣病院の内科で、医師に鳥インフルエンザの可能性があることを告げて受診して下さい。
高病原性鳥インフルエンザの感染の可能性がある場合は、通常のインフルエンザと異なり、次のような詳しい検査が実施されます。
- 検査のための咽頭か鼻腔のぬぐい液を採取します。採取した液は保健所を通じて地方衛生研究所に送付されます。鼻腔ぬぐい液の方が検査感度が低いです。
- 地方衛生研究所または国立感染症研究所ではポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法という特殊な検査方法によって鳥インフルエンザウイルスの有無を判定します。
なお、通常のインフルエンザと同様に、インフルエンザ迅速診断キットを使って診断しても構わないです。
しかし、これまでの経験から、鳥インフルエンザH5N1亜型は、迅速診断キットで正しく判定される率が低いので、鳥インフルエンザH5N1亜型の感染診断には迅速診断キットは基本的に役立たないとされています。
もし通常のインフルエンザの検査方法について詳しく知りたい時はこちらをどうぞ
→インフルエンザ検査方法と時間や料金を調査!受診時期はいつがベスト?
鳥インフルエンザの治療方法
A型インフルエンザに有効な抗インフルエンザ薬が有効です。
もし抗インフルエンザ薬について詳しく知りたい時はこちらをどうぞ
→抗インフルエンザ薬の効果と副作用一覧!予防投与と保険の関係も
あとがき
鳥インフルエンザというとなんとなく怖いものというイメージがあったのですが、よくわからないので調べてみました。
確かに一旦ヒトからヒトへ容易に伝染する能力を備えると大変恐ろしいもののようですが、人類としてもウイルスの突然変異をなるべく遅らせることと、仮に新型ウイルスが発生してもそれに対する対策はワクチンの開発などで着々と進めていることも確かです。
病気の大流行で一番怖いのは病気そのものよりもの集団のパニックが起こることと言われています。
病気に対する正しい知識を持って、もしもの場合もあわてず落ち着いた行動を取りましょうね!
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<参考サイト>
厚生労働省 鳥インフルエンザに関するQ&A http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou02/qa.html
YAHOO!ヘルスケア https://medical.yahoo.co.jp/katei/251377000/?disid=251377000
感染症情報センター 鳥インフルエンザ http://idsc.nih.go.jp/disease/avian_influenza/56idsc-hosp.html
国立感染症研究所 感染症情報センター 鳥インフルエンザに関する Q&A(2006 年 12 月版) http://idsc.nih.go.jp/disease/avian_influenza/QA0612.pdf