ドナルドトランプ氏が第45代アメリカ合衆国大統領となってから、TPP離脱にメキシコ国境の壁建設許可と次々と「大統領令」に署名していることが話題となっています。

 

ところで「大統領令」とは何なのでしょうか?

「大統領」の「令」なのですから、「大統領からの命令」であることは間違いないと思いますが、母国が大統領制ではない日本人にとっては、その権限や効力の強さがよくわからないですよね?

 

いつも暴走気味のトランプ大統領が、何かとんでもない大統領令に署名をした時に歯止めをかける方法はあるのでしょうか?

 

さらに、アメリカも法治国家(法律に基づいて治められている国)なのですから、「大統領令」とは別にもちろん「法律」があるのですが、「大統領令」と「法律」の違いは何なのでしょうか?

 

この記事では、そんなアメリカの「大統領令」に関する疑問についてお答えしていきます!

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アメリカ大統領令とは何か?

まずは「アメリカ大統領令」とは何なのかを調べていきましょう。

 

コトバンクからアメリカ大統領令の解説を引用します。

大統領が議会の承認や立法を経ずに直接、連邦政府や軍に発令する命令。憲法に明確な記述はないが、法律と同等の効力をもつ。第2次世界大戦時のフランクリン・ルーズベルト大統領は、12年間の在職中に3522件も発令。オバマ政権では、気候変動対策の強化や化学物質管理の安全性向上など170件近く出されている。議会は反対する法律を作ることで大統領令に対抗できるほか、最高裁判所も違憲判断を出すことがある。

 

アメリカ大統領令を一言で言うと、

「アメリカ大統領が誰に相談する必要もなく政府や軍に出せる命令」

と言うことです。

 

ポイントをまとめてみましょう。

  • 大統領が議会の承認や立法を経ずに直接、連邦政府や軍に発令できる
  • 法律と同等の効力をもつ
  • 議会は反対する法律を作ることで大統領令に対抗できる
  • 最高裁判所も違憲判断を出すことがある

これらのポイントについて、深掘りして調べてみたいと思います。

 

アメリカ大統領令の権限

日本やアメリカのような民主主義国家は、どんなことでも議会(日本の場合は国会の衆議院と参議院)で、国民の代表である議員が討議して、国の政治に関する決め事をするのが大原則ですし、法律に反することは、たとえ総理大臣であっても命令することはできません。

 

ところが、アメリカ大統領令は、議会や裁判所などに確認すること無しに政府や軍に命令をすることができてしまうのです。

 

つまり、アメリカ大統領令は、王様や独裁者の命令(勅命と言います)と同じものなのです。

さらに重要なのは、アメリカ大統領令を使えば、大統領の署名ひとつで軍隊を動かせてしまうということです。

 

大統領一人の判断で戦争を起こせてしまうのですね。

 

そして、アメリカ大統領令のあやういところは、「権限の制限範囲は憲法で明確に規定されているわけではない」ということです。

 

アメリカ大統領が、それまでの慣例を無視して権限の制限範囲を無制限に広げてしまうと、アメリカ大統領の署名一つでなんでもできてしまうということです。

 

怖いですね・・・

 

ですが、安心してください!

 

大統領令の権限は無制限ではないです。

 

連邦最高裁判所が違憲判断を出したり、連邦議会が反対する法律を作ったりすることによって、それに対抗することができるのです。

 

アメリカ大統領の暴走に対する一定の制限をかける方法はあるということですね。

 

ホッと一安心です(汗)

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アメリカ大統領令の効力

冒頭で触れたように、アメリカ大統領令は、法律と同等の効力を持っています。

 

ところで法律とは何なのでしょうか?

 

法律の定義を「大辞林」から引用します。

①社会生活の秩序を維持するために、統治者や国家が定めて人民に強制する規範。法。
② 憲法に基づいて国家の立法機関により制定される成文法。

 

つまり法律と同等の効力を持つアメリカ大統領令は、アメリカ大統領が合衆国民に強制できる絶対的なものなのです。

 

そして、一般的に法律は、議会によって議員が十分に議論した後に定められるものです。

しかし、アメリカ大統領令は、アメリカ大統領が一人で決めることができます

 

ここが法律とアメリカ大統領令の大きな違いです。

過去のアメリカ大統領令

 

アメリカ大統領令は、1907年から番号がつけられ始めており、その番号は過去に遡って付いています。

 

記念すべきアメリカ大統領令の第1号は、第8代アメリカ大統領リンカーンが発したあの有名な

奴隷解放令

なんだそうです!

「奴隷解放令」を第1号に持ってくるあたりに、アメリカという国の自由の精神を感じますね!

下の写真が大統領令第1号です。何か荘厳なオーラさえ感じませんか?

出典:Wikipedia

 

強大な権限と効力を持っているアメリカ大統領令のことですから、「発令の頻度はそれほど高くないのでは?」と疑問に思ったので、過去にどれくらいの頻度で発令されていたのかを調べてみました。

下の表は、戦後のアメリカ大統領の大統領発令数の一覧です。

大統領の名前 任期 通算発令回数 年間平均回数
33代目 ハリー.トルーマン 1945—1953 573

72

34代目 アイゼンハワー 1953—1961 320 40
35代目 J.F.ケネディ 1961—1963 214

102

36代目 ジョンソン 1963—1969 315 52
37代目 リチャード.ニクソン 1969—1974 306 61
38代目 ジェラルド.フォード 1974—1977 169 56
39代目 ジミー.カーター 1977—1981 320  80
40代目 ロナルド.レーガン 1981—1989 256

32

41代目 G.H.W.ブッシュ 1989—1993  166 42
42代目 ビル.クリントン 1993—2001 238 30
43代目 G.W.ブッシュ 2001—2009 197 25
44代目 オバマ 2009—2016 167 33

引用:https://shimamyuko.wordpress.com/2014/01/30/大統領令の歴史的事実と解釈/

 

意外だったのは、どの大統領もかなりの大統領令を頻発しているということです。

一番少ないG.W.ブッシュ元大統領でも年平均で25件も大統領令を発令しています。

月に2件以上のペースですね。

 

大統領令の権限の強大さからすると、戦争や国家の危機などのここぞ!という重大事に発令されるものかと思っていましたが、大統領の当然の権利として発令が認められているのがアメリカ大統領令なのですね。

 

ちなみに、トランプ大統領の初めての大統領令は、大統領就任初日の1月23日に発令されたTPP離脱です。

そして1月25日に発令されたメキシコ国境の壁建設と、かなりペースが早いのは間違いないですね。

 

TPP離脱の日本や生活への影響について知りたい方はこちらの記事もどうぞ!
アメリカのTPP離脱の日本への影響を解説!脱退後の生活に変化はある?

アメリカ大統領令の違憲判断の例

これまで見てきたように強大な権限ながら頻繁に発令される大統領令なので、大統領のやりたい放題になるのではないかとの不安が頭をよぎります。

しかし、大統領令が連邦最高裁判所に違憲とされた実例もしっかりあります。

 

違憲判断は過去に2回あります。

そのうちの一つは、トルーマン大統領が朝鮮戦争時にストライキしていたオハイオ州の製鉄工場を強制接収した大統領令10340号です。

 

たったの2回ではありますが、違憲判断の前例があるというだけで、トランプ大統領の暴挙も無制限ではないとわかってほんの少し安心ですね(嘲)

 

就任早々にアメリカ大統領令を連発しているトランプ大統領の対日政策や日本への影響について知りたい方はこちらの記事もどうぞ!
ドナルドトランプ大統領の対日政策まとめ!日本への影響が深刻

まとめ

アメリカ大統領令について、その内容や権限と効力と法律との違いを調査しました。

かなり強大な権限を持つアメリカ大統領令ですが、アメリカ大統領の暴走を制限する方法は存在し、過去に違憲判断となった例もあることがわかりました。

 

ただし、憲法での制限の根拠が曖昧だったり、違憲判断の頻度が極めて低かったりしていることもあり、不安な要素もたくさんあります。

 

トランプ大統領には、アメリカ大統領令第1号を自由の象徴である「奴隷解放令」にしたアメリカの先人の思いを汲んで、一人で暴走することなく、周囲のブレーンや議会とよく相談して、適切な大統領令を発令していくように慎重になってほしいものです。

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