2001年にタミフルが保険適用されてから、インフルエンザの患者には抗インフルエンザ薬が処方されるのが半ば常識になりました。

タミフルの他にも数種類の抗インフルエンザ薬が保険適用され、その特性によって使い分けされています。

しかし、インフルエンザにかかって病院に行っても、医師から一方的に特定の抗インフルエンザ薬を出されるだけで、何か納得いかないことってありませんか?

そんなあなたのために、この記事では抗インフルエンザ薬の種類と効果、副作用などを一覧表も交えてまとめていきます。

さらに最近話題の抗インフルエンザ薬の予防投与について保険診療の適用可否も含めて情報をお伝えします!

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抗インフルエンザ薬の効果はどのようなものか?

抗インフルエンザ薬は、その使い方として、発熱などの発症後に治療のために使う一般的な使い方と、家族など周囲にインフルエンザ患者がいる時に発症予防のために使う予防投与の2種類があります。

どちらの使い方でも薬が効果を発揮する原理は同じです。ここではその原理について簡単に説明していきます。

また、予防投与についてもその適用範囲や保険適用について下の方で解説します。

インフルエンザの症状を抑えるには?

インフルエンザは、インフルエンザウイルスによって症状が引き起こされます。

ですから、病気を治療するためには、インフルエンザウイルスが増えないようにして、その働きを抑えれば良いのです。

インフルエンザウイルスが増えることを抑える方法

インフルエンザウイルスが細胞へ入ってくるとウイルス自身が保有しているRNAと呼ばれる遺伝情報を細胞内へ放出します。

これによってインフルエンザウイルスの遺伝子が細胞へ組み込まれ、インフルエンザウイルスに必要な遺伝子やタンパク質を作り出すようにプログラムが組み込まれます。

細胞内でウイルスが大量に作られ、最後には細胞の外へ放出されます。このサイクルの繰り返しでインフルエンザウイルスは増えていくのです。

ということは、インフルエンザウイルスが細胞外へと放出されるのを邪魔(阻害)すれば、ウイルスが細胞内に閉じ込められるので、インフルエンザの症状が悪くなるのを抑える効果があるのです。

ノイラミニダーゼ阻害薬

インフルエンザウイルスが放出される時に、「ノイラミニダーゼ」と呼ばれる酵素によって、「細胞からインフルエンザウイルス切り離される過程」が進むのです。

そこで、ノイラミニダーゼの働きを邪魔すれば、インフルエンザウイルスが切り離されることを抑えることができ、インフルエンザウイルスを細胞内に閉じ込めることができるのです。

このような作用をする抗インフルエンザ薬を「ノイラミニダーゼ阻害薬」と言い、「タミフル」「リレンザ」「イナビル」「ラピアクタ」の各薬がそれにあたります。

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出典:役に立つくするの情報〜専門薬学

RNAポリメラーゼ阻害薬

「ノイラミニダーゼ阻害薬」と少し作用の異なる薬として「RNAポリメラーゼ阻害薬」という種類の薬があります。

動物の細胞の核の中に入ったインフルエンザのRNAが複製される時に重要な働きをする酵素にRNAポリメラーゼと呼ばれるものがあります。

RNAポリメラーゼの働きを邪魔(阻害)すれば、インフルエンザウイルスの遺伝子(RNA)を新しく作れないため、インフルエンザウイルスが増えるのを抑えることができます

このような作用をする抗インフルエンザ薬を「RNAポリメラーゼ阻害薬」と言い、「アビガン」という薬がそれにあたります。

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出典:役に立つくするの情報〜専門薬学

アビガンはインフルエンザウイルスの増殖自体を抑制する作用があるため、薬の投与開始が遅れたとしても効果を示すことが特徴です。

タミフルなどのノイラミニダーゼ阻害薬薬が効かないインフルエンザウイルス(ノイラミニダーゼ阻害薬耐性ウイルス)や鳥インフルエンザウイルスに対しても、アビガンは有効であることが分かっています。

ただし、新型インフルエンザの大流行(パンデミック)の時だけに使用するように制限がかけられています。

従来の抗インフルエンザ薬とは異なる作用をする画期的な薬であるため、インフルエンザウイルスがアピガンに対する耐性を持たないようにコントロールしているのです。

なお、アビガンは動物などを用いた試験で胎児に奇形をもたらす作用が確認されています。そのため、妊婦への投与はできません。

抗インフルエンザ薬の予防投与とは?

上で説明した抗インフルエンザ薬は、発症後の治療のためだけではなく、インフルエンザの患者に接触したりして、特に感染のリスクが高い人に対して抗インフルエンザ薬を予防投与することがあります。

予防投与は、インフルエンザ患者と接触してから36時間以内に投与ると予防効果を最も発揮します。抗インフルエンザ薬をあらかじめ投与することによりインフルエンザウイルスの増殖を抑えることができるのです。

インフルエンザウイルスのA型・B型ともに、予防効果が認められています。

インフルエンザ治療薬で予防投与が認められている患者は?

対象となるのはインフルエンザを発症している患者と一緒に生活している以下の人たちです。

  • 高齢者(65歳以上)
  • 慢性呼吸器疾患又は慢性心疾患患者
  • 代謝性疾患患者(糖尿病等)
  • 腎機能障害患者

特に高齢者は基礎疾患などもあり、インフルエンザを発症した際に重症化しやすいため、日本感染症学会が「予防投与を早期から積極的に行って被害を最小限にしよう」と提言しています。

予防投与に保険診療は適用されるのか?

インフルエンザの予防投与は治療ではないので、たとえ家族にインフルエンザ患者がいたとしても保険適用外であり、全額自己負担となります。

また、日本の健康保険法では保険診療と保険外診療を併用する混合診療を一部の特別な治療方法を除いて認めていません。

厳密には併用しても良いのですが、保険診療の分も含めて全額自己負担となるということです。

従って、薬の値段だけでなく、病院の診察料や調剤技術料、薬学管理料などがかかるためその総合計額を負担しなければいけません。

通常保険診療では3割負担ですから、残りの7割も全額負担になります。

これは結構大きな出費となりますからよく覚えておいてください。

よく処方される抗インフルエンザ薬

上で説明したように抗インフルエンザ薬は作用の仕方によって2種類に分類されますが、一般に処方される薬はノイラミニダーゼ阻害薬であり、現在一般的に処方されている商品としては以下の4種類あります。

  • タミフル
  • リレンザ
  • イナビル
  • ラピアクタ

各薬の主な特徴を下の表に一覧にしました。

商品名 薬品名 対応
する型
摂取方法 投与時期 副作用
タミフル オセルタミビル
リン酸塩
A型
B型
両方
経口 発症後
48時間
以内
吐き気、嘔吐
腹痛、下痢
リレンザ ザナミビル
水和物
吸入 下痢、発疹
吐き気、動悸
イナビル ラニナミビル
オクタン酸
エステル水和物
吸入 下痢、悪心
胃腸炎、蕁麻疹
ラピアクタ ペラミビル 点滴 下痢、白血球減少
嘔吐、蛋白尿

各商品についての詳細のを以下に説明していきます。

タミフル(オセルタミビルリン酸塩)

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A型・B型両方のインフルエンザウイルスの増殖を防ぐ効果があります。

口から飲むタイプの薬です。

成人と1歳以上9歳以下の子供に処方されます。

10歳以上20歳未満に対しては、下に書いた異常行動を避けるために厚生労働省より処方を控えるよう通達されています。

通常はカプセル剤ですが、子供の場合は粉薬が一般的です。

症状が出始めたら48時間以内に服用するのが効果的です。

48時間を超えた患者には効き目が薄いので、無駄な処方がされないよう注意が必要です。

副作用は、吐き気、嘔吐、腹痛、下痢などの胃腸症状などが主です。

リレンザ(ザナミビル水和物)

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A型・B型両方のインフルエンザウイルスの増殖を防ぐ効果があります。

5歳以上であれば利用できます。

吸入薬です。専用の吸入器を使って1日2回を5日間にわたって吸入します。

たとえ熱が下がったとしても、ウイルスが体内に残っている可能性が高いので、再発防止や感染拡大防止のためにも、5日間の使用は守りましょう!

インフルエンザウイルスが増殖する気道に粉薬を直接届けることができるので、すぐにウイルスの増殖を抑えることができます

症状を早く緩和するために、最初の1回はできるだけ早く吸入します

病院や薬局で薬を受け取ったら、その場ではじめの1回分を吸入するのが良いです。

副作用としては下痢、発疹、吐き気、動悸などが報告されています。

イナビル(ラニナミビルオクタン酸エステル水和物)

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A型・B型両方のインフルエンザウイルスの増殖を防ぐ効果があります。

吸入薬です。

イナビルの最大の特徴は、1回の吸入だけで治療が終わることです。

10歳以上は2容器2つを吸引します。10歳未満は1容器を吸入します。

吸入後の継続治療は必要ありません。

1回の治療で確実に薬を吸入する必要があるので、病院で医師や看護師の指導を受けながら吸入した方が良いです。

特に小さな子供の場合は、うまく吸入できているか保護者も注意して観察しましょう。

副作用は、下痢、悪心、胃腸炎、蕁麻疹などが報告されています。

リレンザかイナビルか?

同じ吸引タイプの薬であるリレンザとイナビルですが、どちらを処方するかは担当する医師の判断によります。

平たくいうと医者の好き嫌いによるようです(笑)

効果を比較してみると、リレンザの方が最近流行しているA香港型とB型に対して効果が高いと言われています。

イナビルの方が新しい薬でデータが不足していることもあり、古い方のリレンザを処方される医師も多いようです。

しかし、イナビルの一回吸引するだけで治療が完結する特徴は、リレンザの1日2回5日間に比べると煩雑さにおいて大きなメリットであり、家庭での負担を考えてイナビルを多く処方する医師も多いです。

どちらが良くてどちらが悪いというわけではないようですね。

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ラピアクタ(ペラミビル)

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点滴注射薬です。

カプセルを飲んだり粉薬を吸入したりするのが困難な患者さんにも投与できることが特徴でありメリットですが、逆に医療機関でなければ投与ができずデメリットでもあります。

1回15分~30分ほどの点滴で、タミフル2錠を5日間継続するのと同じ効果を得られるので注目されています。

大人の場合、300mgを15分以上かけて点滴します。重症化する可能性が高い場合は300mgを15分以上かけて点滴します。

子供の場合は、1日1回10mg/kgを15分以上かけて点滴し、1回の点滴上限は、600mgまでに制限されています。

ただし、臨床実験がない状態で承認を受けた薬であるため、実験データが不足しており、特別な理由がない限り子供に投与するケースが少ないようです。

基本的には一度の投与で治療を完結させますが、症状が重い場合には1日1回600mgを何日かに分けて投与することもあります。

発症から48時間以内に投与した場合に有効です。

副作用は下痢、白血球減少、嘔吐、蛋白尿などが認められています。

番外:シンメトレル(アマンタジン塩酸塩)

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A型インフルエンザにのみ効果があります。

1日に400~1200mgを口から飲みます。

現在、この薬に対して耐性を持つウイルスが発生し始めているので、アメリカでは使用が禁止されています。

シンメトレルを服用した際に解熱・症状緩和にかかる時間が延びてきているという報告があり、日本でも抗インフルエンザ薬としては現在はほとんど使用されていません。

抗インフルエンザ薬の重大副作用〜異常行動

タミフルに関する報道が有名ですが、抗インフルエンザウイルス薬を使用した場合に、異常行動を起こす例が報告されています。

異常行動の発生は、タミフルの他にリレンザ、ラピアクタ、イナビル、シンメトレルでも認められています。

異常行動の例

異常行動としては以下のような行動をすることがあります。下のような行動が見られたらすぐに医療機関に相談しましょう。

  • 突然立ち上がって部屋から出ようとする。
  • 興奮状態となり、手を広げて部屋を駆け回り、意味のわからないことを言う。
  • 興奮して窓を開けてベランダに出ようとする。
  • 自宅から出て外を歩いていて、話しかけても反応しない。
  • 人に襲われる感覚を覚え、外に飛び出す。
  • 変なことを言い出し、泣きながら部屋の中を動き回る。
  • 突然笑い出し、階段を駆け上がろうとする。

異常行動の発生しやすい条件

年齢や性別、時期などが発生頻度に影響することが厚生労働省の調査からわかっています。

  • 10歳前後の小児において発生しやすい(平均9,44歳)
  • 男性の割合のほうが多い(男性65%、女性35%)
  • 眠りから覚めて直ぐが起こりやすい(眠りから覚めて直ぐ76%)
  • 特に発熱後1日以内、2日目に起こりやすい1日以内:25%、2日目:46.43%)

異常行動への対応方法

発熱後の2日間は、子供が一人きりにならないように、保護者がしっかり見守りましょう

あとがき

抗インフルエンザ薬の効果や副作用についてまとめました。

一口に抗インフルエンザ薬といっても何種類もあり、投与方法やメリット、デメリット千差万別です。

処方するのは専門家である医師の仕事であり、基本的に任せておけば良いと思いますが、何かあった時のことを考えて、患者や保護者も抗インフルエンザ薬の正しい知識を持っておきたいものです。

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<参考サイト>
いしゃまちhttps://www.ishamachi.com/
厚生労働省インフルエンザQ&A
http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou01/qa.html
役に立つくするの情報〜専門薬学 http://kusuri-jouhou.com/
ミナカラ https://minacolor.com/articles/show/220
ヘルスケア大学 http://www.skincare-univ.com/article/008990/